Lithography of Thought

考えたこと、思ったことを綴ったLithography(石版)

投資信託の分配金再投資は本当に得なのか


星の数ほどある投資信託の中でも、根強い人気を誇る「毎月分配型」の商品。
ファンドの収益に応じて配当を現金で投資家に分配するわけですが、
この分配金を現金で受け取るか同じファンドに再投資するかを選択することができます。

巷にあふれている情報によると、「再投資」のほうが"複利効果"を活かせてオトクなようです。

参考: 
毎月分配金でお小遣いにするか?再投資して雪だるま式に増やすか?





本当にそうでしょうか。
というわけで、簡単にシミュレーションしてみました。

ケース① 基準価格騰落率 -5% / 基準価格配当率 15%

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ケース② 基準価格騰落率 0% / 基準価格配当率 10%

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ケース③ 基準価格騰落率 5% / 基準価格配当率 5%

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(税率は20%で計算)



基準価格が上がり続ける場合は再投資の方が得だが、基準価格が下がり続ける場合は受取のほうが得ということがわかります。
考えてみれば当然で、再投資してもファンドの基準価格が値下がりすればそれに引きずられますが、
一度現金として受け取ってしまえば、ファンドの基準価格の値下がりから切り離されます。

つまりポイントは、毎月分配型投資信託の基準価格はどう変化するのか、ということです。


ここで一つのファンドを紹介しましょう。


PIMCO 米国ハイイールド債券 通貨選択型ファンド(ブラジル・レアルコース)www.smtam.jp


このファンドは私がまだ資産運用1年生のころ、友人に勧められたものです。
友人がこのファンドを勧めた理由は「分配金が多いから!」でした。

確かに、当時は基準価格8000円程度で、毎月150円の分配金を出していました。
年通算での基準価格配当率はなんと22.5%!たしかにこれは凄い。

今となっては、基準価格2862円、毎月の分配金は35円です。
基準価格は60%以上減損し、分配金も当時から75%以上削られてしまっています。

これほどまでに基準価格が下がった理由は、リーマンショック以来のブラジルレアル安だとか、
原油価格下落に伴うハイイールド債(=ジャンク債)の市場の低迷とか、
色々あると思いますが、これはあまりにもヒドすぎです。


このファンドを大量に買ったらしい友人は今頃どうしているでしょうか。心配です。


ファンドのレポートには、基準価格の要因分析というのがあり、それを眺めているとあることに気づきます。
「分配要因」が、インカムゲインキャピタルゲインと切り離されて記載されています。

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「分配金って、運用利から出してるんじゃなかったの!?」という声が聞こえてきそうですが、これが現実です。
多くのファンドは、元本を切り崩して虎の子の配当金を捻出しています。

毎月分配型のファンドで配当金の分配を止めることは、ファンドの死を意味するので何としても避けたいでしょう。
したがって元本を削り続けます。無くなるまで…


つまり、上記のケース①~③の例だと、ケース①に当てはまることが圧倒的に多いのです。
基準価格が目減りしていくファンドが多いのに、再投資なんかしたら、
資産は基準価格の低下に引きずられて目減りしていことでしょう。

実際に、ケース①のグラフをもう一度見てみましょう。
ある時点を境に、総額が目減りしています。配当を出し続けているのに!

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結論


「高配当」「毎月分配」の投信で分配金を「再投資」している方、今すぐ受取に換えましょう。
その金でインデックスファンドの積み立てをするなり、定期預金を組むなり、他の運用に切り替えたほうが良いです。

現場からは以上です。

ルメールという名の敏腕ペースメーカー


NHKマイルカップ
前走桜花賞で1番人気に推されたものの4着に敗れたメジャーエンブレムが1番人気。2番人気は皐月賞8着のロードクエスト

NHKマイルカップといえば、昔はシーキングザパールエルコンドルパサーなど、クラシックとは無縁の外国産馬が活躍し「マル外ダービー」の異名もありましたが、最近はダービー・オークスを回避して参戦する馬が増えましたね。
皐月賞8着馬が2番人気とはどういうことかと突っ込みたくなりますが、牡馬と牝馬の一戦級が激突するレースとしては大変貴重かなとも思います。

さて、レースは先手を取ったメジャーエンブレムがそのまま直線で後続を突き放し、追い込んできたロードクエストを退けるという人気サイドの決着でした。
勝ちタイムは1.32.8。ダノンシャンティの脅威的なタイム(1.31.4)からすると若干物足りないが、中間の水曜に14.5mmの雨量があって少し湿りが残っていた馬場だったことを鑑みると、NHKマイルカップとしてはまずまず速いタイムではないでしょうか。


メジャーエンブレムと言えば去年の2歳女王ですが、何と言っても圧巻だったのが今年2月のクイーンカップ
洋芝が枯れた2月の府中で1.32.5のタイムを叩きだし、2着を5馬身ぶっちぎりという驚異的なパフォーマンスで圧勝。
今回NHKマイルカップメジャーエンブレムを本命にした多くの方々は、「クイーンカップのパフォーマンスを再現できれば」ときっと思っていたでしょう。

で、ラップタイムを比較してみました。

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驚くべきことに、見事なまでにほぼ同じラップ!!
こんなことってあるんでしょうか。ルメール騎手がメジャーエンブレムの能力を見事に引き出した会心の勝利という言葉がしっくりきます。
3か月前のレースとほぼ同じラップで走らせるとは、狙ってできるものではないでしょうし、ルメール騎手の絶妙な手腕以外の何物でもありません。



ちなみに、今回のメジャーエンブレムの逃げ切りで、このレース過去5年で何と3頭が逃げ切り勝ち。
府中のマイルは逃げ切りが難しいと言われていたのも過去の話なのでしょうか。





ラーメン屋に1人で並んでいて「お後の2名様を先にお通ししてもよいでしょうか?」と言われた話





先日、ラーメン屋に1人で並んでいた時のことである。
30分ほど並んだであろうか、ついに行列の先頭まだ到達し、店の暖簾が目の前に広がっている。
中から店員が出てきて、私に声をかけた。

ついに中に入れる…
ようやく夕食にありつけることができる…

そう信じて疑わなかった私は、衝撃的な言葉を耳にすることになる。

「お客様は1名でしょうか?お後の2名様を先にお通ししてもよいでしょうか?」

え?どういうこと?
2人で並んでいて、先に後ろの1人客を通すならわかる。
2人がまとまって座れる場所がない場合は往々にしてあるからだ。

だが店員は1人で並んでいる私に確かにこう言った。

「お後の2名様を先にお通ししてもよいでしょうか?」




私はコンピュータの業界にいて長い。
基本的な数学/コンピュータ科学の基礎知識は身につけているつもりだ。

単位時間あたりの処理量(=店舗でいうと回転率)を重視すると、これは至極合理的だ。
もし2人が座れるテーブルなどが空いた場合、
そこに2人客を優先的に配置し、1人客は後からカウンターの空いたところに座らせるほうが良い。

CPUを順番に占有するするスレッドや、メモリに乗りたがるプログラムには、心はない。
よって、遠慮なく効率的な方法で処理するのが良いだろう。私もそれに異論はない。


ただし、行列をなす一人ひとりの客は心がある人間であり、
客からしてみれば、店の効率などどうでもよい話。

入ることができるスペースが店の中にあるにもかかわらず後回しにされたことに対して、深い憤りを覚えた。